起業前後には、創業メンバー集め、事業選定、資金調達について相談出来る相手もなかなかおらず、悩みが尽きることはありません。「起業家1年目の教科書」では、創業期の起業家から多数出た質問を元に、現役で活躍する様々な若手起業家から生の声をいただいています。
今回は、ファッションを軸にメディアやECプラットフォーム運営するPATRAの海鋒氏に、「起業家1年目の教科書」インタビューとして語っていただきました。
目次
- 【事業選定の方法】「若さ」が強みになる、事業の選び方
- 【創業メンバーの見つけ方】自分の弱い点を知り、オープンに伝える
- 【創業期に気づけて良かったこと】経営は長期戦。役員報酬は十分に確保しよう
- 【起業家一年目の教科書】起業家にすすめる3つのこと
- 【Message】WITH COVID-19 これから起業する人達へ
海鋒 健太(かいほこ・けんた)| 1991年生まれ。株式会社PATRA、代表取締役社長。東京大学工学部システム創成学科卒業後、フリーランスのエンジニアとして活動。16年にPATRAを開始。女性向けメディア・ファッションコマースのプラットフォーム「PATRA MARKET」を運営。運用するInstagramの総フォロワー数は75万を越え、リピーターが続出するEC事業を支えている。
Contents
【1.事業選定の方法】「若さ」が強みになる、事業の選び方
海鋒 健太氏:「自分自身が事業領域に合うか?」「トレンドの波が来るか?」という点を意識して事業領域を選びました。
「自分自身が事業領域に合うか?」という点では、若さを強みにした事業を探すことを軸にしていました。「若いからこそできる事業とは何か?」と考え続け、C向けサービスで戦うことにしました。
C向けプロダクトはトレンドをいかに早くキャッチするかで勝負が決まります。C向けプロダクトで特にスマホネイティブの若い世代をターゲットにしたプロダクトの場合、自分たちのような若いチームの方がニーズやトレンドを早くキャッチできると思いました。。一方、BtoB領域のスタートアップは経験の多さや人脈が勝負を決めると考えていました。
そのような、「若さ」が強みになるという観点からたどり着いたキーワードが「インフルエンサー」でした。
インフルエンサーは、基本的に10〜20代が多いです。年の離れた方からアプローチするよりも、近い世代の僕らがアプローチした方が、コミュニケーションをとりやすいですよね。この優位性を生かして、インフルエンサーを活用したSNSでのメディア事業に取り組みはじめました。
「トレンドの波が来るか?」という点で話すと、起業した頃、業界では「動画の時代が来る!」と言われていました。動画の可能性への期待値は高かったので、動画×若者という領域にターゲットを定めインスタグラムを中心とした動画事業を開始しました。
しかし、インスタグラムの動画メディア事業に注力する中で、マネタイズの方法に限界を感じはじめました。動画メディアのマネタイズ手段として、広告枠を売るという選択肢は一般的です。しかし、実際に広告営業をはじめてみるとマネタイズの方向性が最終的には「BtoB」になってしまい、このビジネスモデルは「自分に向いていないな…」と感じたんです。
その違和感をきっかけに、すでに自分たちが運営しているインスタグラムのメディアを活用して展開できる新しいマネタイズを考えた結果、小売に目を向けることになったのです。当時のインスタグラムは、ストーリーもありませんでしたし、一般的にはインスタグラムから購買に直接結びつくなど、全く考えられていなかったのもチャンスだったんです。
当時のf1層(女子高生〜大学生あたりの世代)の間では、キュレーションメディアが主流でしたが、インスタグラムを「検索ツール」として使いこなす人たちもいました。これからの時代の情報源は「検索エンジン」 ではなく、SNSに変わる可能性が高い、という実感も湧いていました。
このような変遷で現在の事業に至ります。
【2.創業メンバーの見つけ方】自分の弱い点を知り、オープンに伝える
海鋒 健太氏:C向けの領域で事業を作るには、1人ではほぼ不可能でした。僕は、システムをつくったりオペレーションを構築するのは得意ですが、ゼロから企画を考えたり、コンテンツをつくったりする部分が弱いんですよ。
ゼロから事業を立ち上げる時、自分の弱さを補ってくれるような強力なパートナーが必要でした。そう思っていた時に、インターンで共同創業者の鈴木に知り合いました。
COOの鈴木は企画を考えたり、コンテンツを考えたりするクリエイティブ的な能力が非常に高いんです。鈴木と出会えて、事業を一緒にやっているというのは、奇跡に近いことなので、再現性があるかと言われれば、難しい話ではありますがね…。
互いに得意な領域がはっきり分かれているので、うまく仲間ができています。簡単に言えば、僕が全体の仕組みをつくり鈴木が中身を丁寧に作り上げているというイメージですね。
自分の強みを理解するだけでなく、弱みを認めた上で、自分の得意・不得意をオープンに伝えながら仲間を集めるというスタンスがあると、強いチームができる可能性が高くなると思います。
【3.創業期に気づけて良かったこと】経営は長期戦。役員報酬は十分に確保しよう
海鋒 健太氏:特に、経営陣の役員報酬です。資金・経営への不安から役員報酬を減らす人も少なくないです。意思決定をするはずの役員が安定して生活できるだけの役員報酬をもらっていないと、目先のお金に惑わされて、事業の本質から逸れた意思決定をする可能性が高くなります。
最低でも、7-8年は戦います。だからこそ、長期戦を見込んだ報酬を考えることは、事業の成長のためにも大事なことです。
長期的な成長にはマイナスな影響があっても一時的な利益を生むような案件になびいたりする可能性があるんですよ。
安定して、本事業の成長にとって必要な意思決定をするためには、ある程度の役員報酬は必要なのです。はじめから、年収1000万くらい確保した方がいいという訳ではないです。「ある程度の」というのは、あくまで目安ですが、仮にそのまま新卒で就職していれば、頂いていたであろう程度の額かなと思います。
【4.起業家一年目の教科書】起業家にすすめる3つのこと
1) 「続けられること」を選ぶ
海鋒 健太氏:自分の事業をもって経営するために一番大事なことは続けることです。上手くいっている起業家でも、我慢の時期が長い人が多いです。思い通りにいかない時でも続ける意思を持ち続けるためには、やはり「続けられる」と自分が納得する必要があります。
続けられることを選ぶためにも「続けるべきことと辞めるべきこと」をはっきり定義した方が良いです。
僕の場合は、
- ・C向けの事業でやっていくこと
- ・若い世代にしかできないこと
- ・自分が好きだと思えるサービスをつくること
の3つが軸でした。仮に、ピボットしてそれまでの事業から最大限の学びを得るためにも「やりたくないこと」を明確にして、自分の軸を決めることは大切です。この軸が決まっていないとメンバーも集まらないですし、外部の意見に振り回されやすくなります。
2) 他人の言うことに耳を傾けすぎない
海鋒 健太氏:立ち上げる事業領域が決まったら、誰よりもその領域に詳しいと言えるほどに調べて理解する。そして、どんな反論に対しても自信を持って自分の考えを言い通すこと。これに尽きます。
投資家も仕事として、会社に投資をしています。批判的な意見をもらうことは当たり前です。投資家側も、事業を成功させたいという思いあっての意見だと思います。けれども、この世の中に「絶対に成功する事業」は誰にもわからないのが現実です。
だからこそ、競合他社について調査して、投資家などの反論に対してもしっかりと自信を持って自分の考えを説明することが大切かと思います。
徹底的な調査に加えて、ユーザーと真摯に向き合い続けること。それこそがさらなる自信になると考えてます。
自社と他社の十分な分析をもとに、自分の考えを固めれば自信を持っていいはずです。他者の意見に耳を傾けすぎないように心がけることは大事だと思います。
3) 自分よりも一歩先にいる人との時間を意識的に増やす
海鋒 健太氏:1日24時間あったら、基本的に従業員との時間が一番長くなります。その社内にいる以外の時間をどう過ごすかで、自分の感覚やモチベーションの方向が決まります。プライベートで仲良くしている人が、自分がいる位置よりも一歩前進しそうな時は、すごく焦ります。近い領域で頑張っていて、起業家として戦う友達は大切だと思っています。仲良くしている友達の一言で、視座がガンっと上げられたことがあって。
経営者として新しい価値観に気づかせてくれる友人は良い影響を与えてくれますし、プライベートで誰と会っているのか見直す時間もたまには必要だと思います。
WITH COVID-19 時代に起業する人達へ
海鋒 健太氏:コロナのようなマクロの大きな変化が起きても会社の本質がブレないようなビジョンや信念を持ちつつ、柔軟にプランBに移行できる組織と経営者の心のゆとりが大事かと思います!そのためにも、PLだけではなくBSにも目を向け数値計画を立てていく。PL、BS、キャッシュフローという基本を今だからこそ忘れないで勝ちましょう!
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