起業前後には、創業メンバー集め、事業選定、資金調達について相談出来る相手もなかなかおらず、悩みが尽きることはありません。「起業家1年目の教科書」では、創業期の起業家から出た多くの質問を元に、現役で活躍する様々な若手起業家生の声をいただいています。
今回は「魔法のような、新体験を」というミッションのもと、エンターテイメント分野で事業を展開させている、いちからの田角氏に「起業家1年目の教科書」インタビューとして語っていただきました。
目次
- 【事業選定の方法】PDCAをフル回転せよ
- 【創業メンバーの見つけ方】意思決定スピードと柔軟性に優れた人
- 【創業期に気付けて良かったこと】「何にこだわり、何を辞めるのか」ひとつの領域にこだわりすぎない事業選定
- 【起業1年目の教科書】起業家にすすめる3つのこと
(田角さんプロフィール)
田角陸(たずみ・りく)|いちから代表取締役CEO。1996年生まれ。早稲田大学出身。
学生起業家として2017年5月に創業。現在は、VTuber(バーチャルYoutuber) のグループ「にじさんじ」の運営を中心として、事業を手がける。
Contents
【1. 事業選定の方法】PDCAをフル回転せよ
田角 陸氏:何事にも共通して言えることなのですが、事業選定もPDCAをどれほどフル回転させるかが大事だと考えています。
まず、計画を立てて、実行。そしてその結果に対して反省をすること。
学生起業家が、一発で事業を当てるはずがないんです。だからこそ、PDCAを高速で回しながら方向性を修正していくしかありません。ときには、事業ドメインから修正しても大丈夫です。自分に合うのか、合わないのかという観点をいれつつ、このフローを回していくことがまずは大事だと思います。
僕はとにかくPDCAをフル回転することから始めたので、この方法をおすすめします。
事業選定の視点は、外的要因と内的要因で分けられます。外的要因は、市場・参入タイミングなどです。内的要因は「自分に向いている領域かどうか」といった観点です。
僕の場合だと、C向けのプロダクトを作っているときの方が楽しかったのでC向け領域の中で、市場選定をしていきました。
外的要因である、市場規模、参入タイミング、戦略、事業における技術的な優位性の継続がいつまで続くのか…などの事項に関してPDCAをまわすときには、投資家の方々からいただくフィードバックはプロダクトや事業の参考に大きく反映しました。
僕に一番刺さったアドバイスは「なぜ、今やるのか」という観点です。
参入が遅くても、早すぎてもダメ。ジャストなタイミングなのか非常に問われます。時代の波についての視点は重要なのです。
例えば、クラシルなどの動画メディアは、僕が起業した当時(2017年)、非常に伸びていると話題に上がっていました。其時伸びているからといって、参入しても遅い。すでに強いプレーヤーもいるのに、ここにゼロの状態で飛び込むのはもうすでに遅れています。
一方で、僕が3年前ほどに、ARと広告を組み合わせたビジネスを考えたことがありましたが、3年前のタイミングで、ARという言葉自体もあまり浸透していない頃。あまりに未来過ぎて、投資にも繋がりませんでした。
そこから、2017年6月にAppleのWWDCでARKitが発表されたのです。ARKitの出現により、表情認識の技術を使ったプロダクトが簡単に作れるようになりました。その後、iPhoneXも発表され、AR領域でのトレンドの波が予測できました。
そこから、当時流行り始めていたanimojiと、生配信をかけ合わせてVTuber領域に参入して、「にじさんじ」をリリースした結果、市場の反応も比較的良かったのです。
事業を作る目的や起業のタイプはそれぞれ。「社会の不合理の修正」が最優先する事項だという起業家もいます。僕には「今やらねばならないこと」を最優先にした事業が合っていたので、時代の波を重視する必要がありました。
僕の場合は、比較的楽に勝てないと後々苦しくなると思っていたので、とにかく「効率よく勝てる領域」を探し続けました。
【2. 創業メンバーの見つけ方】意思決定スピードと柔軟性に優れた人
田角 陸氏:事業領域に対しては、こだわりすぎないようにしようと思っていたので、深く踏み込む事業を決めるまで、一人で回していたのは良かったです。
起業してまもない頃は、創業メンバがー3人いましたが、早い段階でメンバーがいなくなりました。
僕の信念のもとでは、「事業にこだわりすぎないようにする」ことを大事にしていたので、市場や事業の内容の仮説を立ててはすぐ変える…といったことを繰り返していたのです。この変化の速さを厳しいと感じたメンバーが辞めてしまいました。
一人だからこそ、誰にも迷惑をかけることなく、PDCAを回すことができたので、最初はひとりでやっていてよかったなと思っています。
投資を受けてから、事業に本腰をいれたあとのメンバー集めでは、とにかく自分が知っている人のなかで一番優秀な人に声をかけました。意思決定スピードと柔軟性に優れている人が創業メンバーとして優秀だと考えています。
そうして、創業期に仲間となってくれたのが岩永氏です。
創業期は、色んな困難を乗り越えなければなりません。
創業して間もないからこそ、制度も仕組みも整っていない。そういった環境の中だと裏切られたりだとかする可能性だって十分にあります。
そういう観点も踏まえて考えるとしたら、過去に一緒に仕事したことがある人だと、働きやすさを想像しやすいですよね。
岩永氏がジョインしてから、彼が採用を強化していったためメンバーがどんどん増えていきました。
【3. 創業期に気付けて良かったこと】「何にこだわり、何を辞めるのか」ひとつの領域にこだわりすぎない事業選定
田角 陸氏:「1つの領域にこだわりすぎないこと」です。
起業家として「この領域と決めたら諦めない」って気持ちがある人は多いです。諦めない人が勝てるということも、よく言われているので、「諦めないこと」についつい拘ってしまいます。
けれども、「何にこだわり、何を辞めるのか」という問いは大事にすべきだと思うのです。
市場選定次第では事業が波に乗らない可能性が高いこともあります。成果が出づらい市場では、結果に繋がりにくい努力をしなければなりません。
起業して成功することに重きをおくのであれば、事業領域にこだわりすぎない方がよいと考えます。事業ドメインを大きく変えても大丈夫です。とにかく数字が出やすいものはあるので、その領域を探したほうが早いでしょう。
僕の場合は、プレスリリースなどで世にサービスを出したタイミングを、事業領域に見切りをつける、ひとつの判断基準にしています。このタイミングで、オーガニックで数字が伸びてなかったらすぐ辞めた方が良いと思っているからです。
ほとんどの人がインターネットやSNSを日常的に使ってる時代に、オーガニックでグロースしない事業は永遠に苦労します。ユーザーが新たなユーザーを連れてきてくれる仕組みにしたいと考えていたのでオーガニックの流入の数字はかなり重視していました。
にじさんじに関しては、反応が段違いで良かった。
それまでに、3-4つほど、お試しでリリースを出していましたが、圧倒的に反応が違いました。
メディアにも取り上げられて、プレスリリースが7000リツイートほどにもなりました。その反応を見て、この事業は深く踏み込むべきだと感じ、今に至ります。
【4. 起業1年目の教科書】起業家にすすめる3つのこと
田角 陸氏:僕自身、C向けサービスを中心に事業を立ち上げていたので、主にC向けで事業を考えている人にすすめる3点について話します。
1点目は「トレンドをとらえること」2点目は「リスクを恐れないマインドを持つこと」3点目は「意識的に試行回数を多くすること」この3点です。
1)トレンドをとらえること
田角 陸氏:C向けのサービスをやっていく場合、市場のトレンドを捉える力は必要。
僕の場合は、大企業が動く瞬間をくまなくウオッチしています。世界だとGAFA。日本だとLINEなど。アルゴリズムの変更や、新しいAPIの発表のタイミングは、できることが増えるからです。
Facebookが動画に力を入れるタイミングに動画メディアが出てきたのはその一例ですよね。
日本・海外で、インフラとして使われるようなサービスを提供する企業が新しいサービスを始めるプレスを出した瞬間に、いかに時代の波をとらえられるか。
最近だと、YouTubeのアルゴリズム変更やGoogleのStadiaですかね。
そういうところにチャンスが有ります。そこからどういう動きがあるが、洞察していくわけです。C向けサービスを考えているのであれば、この視点をもって考えていくとより早い速度で成長できるんじゃないかと考えています。
ちなみに、TikTokのByteDance社などの中国企業は、確認すべきだと思います。
日本でもかなりのユーザーを抱えているのでので、参考にして悪くないと思います。
2)リスクを恐れないマインドを持つこと
田角 陸氏:「どこかのタイミングで心が折れるかもしれない」と思うのであれば、起業家としてやっていくのは難しいでしょう。
リスクは考えねばなりません。けれども、リスクを踏めないのであれば起業は厳しいです。
まさに「死ぬこと以外かすり傷」的な考え方で動かないと、どこかかで折れます。
麻雀とかカジノのポーカーとかの話に近いのかも。
一度、カジノでポーカーをしたことがあるのですが、そこで感じたことは、自分の手持ちがそうでもないにもかかわらず、ひとつひとつビビっていたら永遠に手持ちは増えないということ。自分が資金力やリソースで弱い状況でも、ベットする気合いがあるかどうかは結構大事だと思っています。
ベットした結果、飛んだとしても、怖くないと思えるマインドをもっていないと何やっても無理。逆に言えば、そのマインドがあればなんとかなるとは思います。
ちなみにこの発見は麻雀から学びました(笑)。
麻雀で勝とうとすると、ある程度のリスクを承知で戦ってくる人達と戦わなければ勝てない。なんだか、経営と一緒だなぁ…なんて思いましたよね。
結局心の持ちようなんです。物知りになればなるほど怖くなることもありますよね。リスクを知った上で失ってもいいぐらいの手で勝負してるかが大事です。
3)意識的に試行回数を多くすること
田角 陸氏:圧倒的な試行回数が大事。
C向けサービスに特化した話になるかもしれませんが、はじめから事業が当たる確率は低いです。トレンドの波を予測したとしても、実際には波が来ないことだってあります。だからこそ、サービスを世に出し続けてみなければと実際に当たるものに遭遇することはありません。
とにかくトライ数を増やして、その中で世間の反応が良いものに集中してサービスをグロースさせる方がいい。プロダクトの細かい部分にこだわってトライ数が減るよりも、まずサービスを世に出してみる機会を増やしたほうが、成長する事業を見つけられると思っています。
経験上、プレスリリースを出した瞬間に世の反応が分かると考えています。世に出した後の反応をみて動いてみるというのは1つの指標として参考にしてみるのもよいと思います。
今、会いたい人
田角 陸氏:C向けの新規事業をガンガンやっていきます。田角直下の新規事業インターンも募集していますので、エンタメ領域に興味あるかた、是非ご連絡ください!
社長直下の新規事業インターン:https://bosyu.me/b/8dBPazYUjww
いちから株式会社:https://www.ichikara.co.jp/
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