こちらの記事は、シードVC「THE SEED」が主催する、起業家との個別メンタリングデー「BrushUp DAY」の書き起こし記事です。
起業前後には、創業メンバー集め、事業選定、資金調達について相談出来る相手もなかなかおらず、悩みが尽きることはありません。「起業家1年目の教科書」では、創業期の起業家から多数出た質問を中心に、現役で活躍する若手起業家から生の声をいただきました。
目次
- 【1.事業選定の方法】事業選定を曇らせた学生起業家の「エゴ」
- 【2.創業メンバーの見つけ方】知名度がない中、泥臭いメンバー集め
- 【3.創業期に気付けて良かったこと】EXITに向き合い、メンバーに伝えることがコミットにも繋がった
- 【起業1年目の教科書】起業家にすすめる3つのこと
Contents
【1.事業選定の方法】事業選定を曇らせた学生起業家の「エゴ」
花房 弘也氏
1992年生まれ26歳。アラン・プロダクツの代表取締役CEO
2014年に起業し、月間100万人以上が訪問する髪の毛の悩みを解決するバーティカルメディア「ヘアラボ(旧:ハゲラボ)」をグロースさせる。
2016年に上場企業のユナイテッドにグループ入り、2018年「Alan Products System」を通して、新規事業を再現性もって生み出す組織作りに取り組む。セクシュアリティやジェンダーの多様性を尊重する社会を目指した「Palette」などの新規事業の開発や、複数のスタートアップM&Aもこなす。
花房 弘也氏:最初は、大学生の頃に「melo(メロ)」というショッピングアプリで起業しました。
その後、残キャッシュが厳しくなったことが大きな理由で、ヘアラボにピボットしました。ピボットのタイミングについて、「もっと早く気付けたな」という反省をがあります。meloをスタートしてから、ピボットまで1年3ヶ月後でした。
ピボットについてちゃんと向き合っていれば、この1年3ヶ月の意思決定は、4ヶ月で気付けたと思っています。でも、実際はピボットに向き合わなかった期間に人が離れ、金がなくなり。
ヘアラボが成長したから良かったんですが、立ち上がってなかったら倒産して、今頃普通にサラリーマンとして働いていたと思います。
そこまでは、自分の「エゴ」みたいなものがあって、周りの意見を聞かずに突っ走ってしまっていたんです。
でもある時、先輩起業家から、現実的なフィードバックを得ることができて。
「どんな経営努力も正しい市場で勝負していないと無意味だよ」という趣旨の内容でした。言い換えると「市場選定を間違えるとどんな天才も努力人もかくじつに死ぬ」ということだと思います。
でも、スタートアップをしていると、VCの人と接点を持つ機会が多かったりして、大きな夢を求められる。現実と向き合わなければいけないのに「この苦しいフェーズを乗り越えられれば大きな事業成果が待っている」と信じ込んでまた夢の中に溺れていく。
一部の特殊成功事例を除いて、そうやってほとんどのスタートアップは死んでいく。もしくはリビングデッド化していくんだと思います。もちろん、特殊成功事例にコミットするのが起業家だという意見もあると思います。
でも、それはあくまでVC都合の話です。僕自身も、堅実な先輩起業家の話を、もっと早く聞いて取り入れていたら、世界観は変わったなって思います。結果論なんでなんとでも言えるんですけど、反省は個人としてずっと持っています。
エゴに突っ走って勝てない。市場がない。でも、奇跡が起こって成功するだろうと期待してしまいます。奇跡は起こったらラッキーで、事業計画に組み込んではいけないと思っています。
だから今の事業が成功するために、既存の会社に追いつくために、「奇跡が起こらないとダメ」という事業に取り組んでいないか、凄く大事な問いかけだと思います。
【2.創業メンバーの見つけ方】知名度がない中、泥臭いメンバー集め
花房 弘也氏:創業期、特にエンジニアの創業メンバーを探すには「エンジニアに対する自分のimpressionを増やす」しかないと思っています。僕の場合は、大学に行って、学生エンジニアに声をかけるところから始まりました。
それから、エンジニアが集まるイベントに行っては声をかけ、エンジニアの方が集まりそうな場所であれば、全て顔をだして声をかけました。大学は色んな大学に行きました。校門前で待ち構えて、ひたすら「エンジニアの人知らないですか」って声かけまくったりしたこともありました。
その後も、1度会ったエンジニアの方から紹介していただいたり、とにかく最初は手数を増やして、泥臭くやっていました。
創業初期にWantedlyなどの採用ツールを使っても、自分に知名度もありませんし、凝ったコンテンツも投稿できませんでした。だから採用ツールで注目されるはずもなく、足で稼ぐ、直接お会いできる努力をしていました。
お話できたら「創業期のゼロの状態で俺と一緒にやっていけるんだよ!」と必死にドヤって、口説いていく、という姿勢で取り組んでいました。
【3.創業期に気付けて良かったこと】EXITに向き合い、メンバーに伝えることがコミットにも繋がった
花房 弘也氏:ゼロイチのイチ以降には「この会社はエグジットをどう考えているのか」という話が出ます。事業が立ち上がってきたら、ある程度明確にエグジット戦略について考え、メンバーにも、ちゃんと話していました。
言えない話も多いと思いますが、言える範囲で「この会社はこういうEXITを目指していて、こういうリターンがありますよ」って率直に伝えていました。みんな途中からは、会社としてのEXITについて理解して、その目標を目指してコミットしてくれたと思います。
だから、ある程度言える範囲でも、しっかりEXITとその時にどういったリターンを提供出来るのかは伝えた方が良いと思います。
【起業1年目の教科書】起業家にすすめる3つのこと
1)結果を出した先輩起業家に「今の会社を辞めて次をやるならどんな事業をやりますか?」と質問する。
花房 弘也氏:めっちゃ結果出してる起業家の先輩方に「今の会社辞めて、次の事業をやるなら、どんな事業ですか」と質問していくと思います。
5人に聞いて5個集まったら、自分が出来そうなランキングを作って、1番上のやつから取り組んでいきます。
僕が学生起業に戻ったら、創業期の事業選定の時にやっておくと思います。
VCの方々と話をする機会も多いと思います。やっぱり資金調達もすると思うので。でも、その中で惑わされてしまうことも多いと思いますし、そもそも事業選定のアドバイスって簡単には出来ないじゃないですか。
事業選定においては、僕の場合は、信頼出来る結果を残している起業家の先輩方に話を聞くと思います。先輩起業家の方々は、気持ちも分かって事業のアドバイスをしてくれる人だと思いますので。
最近は廣澤さんとかもそうですけど、気持ちをわかってくれる人は増えてきた。そういった方経由でも、インターネットサービスで結果を出してる、できれば非ゲーム領域で、という先輩起業家の方々に率直に質問すれば良いと思います。
2)長時間働くことを習慣化する
花房 弘也氏:長時間働くのを習慣化するって事ですかね。例えば、1日12時間かける、週6×4週間を当然のように働く。何事も量は質に転化すると思います。働きまくれば、多少失敗しても成功にたどり着くスピードは高まるのでは。
3)EXITのイメージを持つ。
花房 弘也氏:三つ目はなんだろうな…
事業選定にエゴをなくし、死ぬほど、狂った様に働いて、その先のイグジットの具体的な方向性をもつことじゃないでしょうか。本当は、最初からある程度EXITについてのイメージを持つことが必要だと思います。
ある程度、事業の方向性が見えてきたら、きちんと考えた方が良い。でも、事業選定をした時点で、実は一定の方向性は見えるといえば見えるんですよね。だから1年目からでも、自分の中では考えておく方が良いと思います。
上場するって決めたんだったら、本当に上場まで何年間でここまで行ってって考えるはずです。M&Aだったら1年以内にこの数字作ってこの会社に売るという、カリキュラムを作るようなイメージも出来るでしょうし。
意外とその「決め」がないまま、資金調達してる人は多いと思います。
M&Aだと思った時に、15億~20億円を超えてくると、日本にはそもそもほとんどそんなケースはありません。かといってIPOも、監査法人が引き受ける数に限界はあって、特にこれからはそう簡単に実現はできません。
これから起業する人が、無意識にシリーズB、C、Dと進んで、リビングデッドみたいな企業になってほしくないですし、最初にある程度「決め」を持つ、「明確にする」ことが大事じゃないかと思います。
今、花房さんが会いたい人
花房 弘也氏:今はM&Aをもっと積極的に実施したいと思っています。
起業家の人柄としては、ちゃんと足元に利益を出し、コミットし、そういった地に足ついた方と会いたいですね。尊敬する先輩の手嶋さん(現在はXTech Venturesジェネラルパートナー)はそういった方とよく会っているのが印象的です。
足元の利益が出ていて、それでも更に資金を得てスケールを目指していく起業家、その資金を得る方法がM&Aだと、現実的に検討しているような経営者に会いたいです。是非ご連絡をいただけたらなと思います。
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